M&Aフォーラム賞

第11回M&Aフォーラム賞表彰式 

第11回M&Aフォーラム賞の表彰式は、9月26日(火)18:00から霞山会館「三彩の間」(千代田区、霞ヶ関コモンゲート西館37階)で行われました。

今回のM&Aフォーラム賞は、平成28年(2016年)度に発表された作品(書籍・論文)が応募、選考の対象でした。
応募いただきました作品数は、近年では最も多い15作品(書籍9、学術論文6)でした。M&A実務に関わる作品が8作品で最も多く、作品の分野から見ると、法律、経済、経営、税務・会計、ファイナンスなどをテーマにそれぞれの観点で掘り下げた作品の応募がありました。
今回の特徴をあげると、海外企業とのM&AやM&Aによる事業売却・承継をテーマとした作品が見られ、理論と実務、法制度・規制などの面から論じられていました。また、契約書作成の実務やデュー・ディリジェンス時の財務・税務面での留意点などに関して詳しく解説した作品も寄せられました。
次に、応募された方のプロフィールでみると、研究者の方から6作品、法律、会計等専門家の方が2作品、事業会社等民間の方から7作品でした。また、社会人を含む学生の方からの応募は3作品となっております。
お一人でまとめられた作品だけでなく、共著や所属の機関・グループ等のメンバーでとりまとめた作品もあり、応募いただきましたそれぞれの作品のレベルは、今までの作品に勝るとも劣らない、非常に優れたものでありました。

表彰式は、落合誠一M&Aフォーラム会長(東京大学名誉教授)からの挨拶からスタートしました。
落合会長「M&Aフォーラム賞も第11回の表彰となり、月日のたつのは早いと感じています。M&Aもわが国に定着し、国内のみならず、海外企業とのM&Aも活発に行われ、M&Aフォーラムの設立時と比べると、大きな変化が生じていると感じています」
とまず話され、表彰にあたり、
「数多くの優れた作品を応募いただいたすべての応募者の皆様に対しまして、お礼を申し上げます」
と謝辞を述べられました。さらに、
「スポンサーであるレコフ社と、多忙な中で、難しい審査、選考の労を賜っている岩田一政選考委員長始め、3人の選考委員の方々にも感謝いたします。この後、岩田選考委員長から詳しく講評をいただくと思いますが、楽しみにしております」
と続けられ、
「見事に正賞、奨励賞、選考委員会特別賞に選ばれた受賞者の方々に、心からお祝い申し上げます」
として、受賞の皆様へのご祝辞と合わせて、お忙しい中で受賞式にお集まりいただいた列席の皆様に対してもお礼の言葉が伝えられました。

落合会長の挨拶に続き、表彰状の贈呈へと移ります。
まずは、正賞となった書籍『日本の公開買付け 制度と実証』(有斐閣 刊)から、表彰は始まりました。 レコフ賞
同作品は、大学の研究者9名と森・濱田松本法律事務所の弁護士の方々による「公開買付研究会」のメンバーで執筆された研究書で、今回の応募者であり、序章と第6章を執筆、編者でもある田中亘様(東京大学社会科学研究所 教授)が執筆者の代表として表彰状の授与されることとなりました。登壇された田中様に対して、落合会長が表彰状を朗読、授与が行われると、会場は満場の拍手で包まれました。

次に、今回の奨励賞は、論文1と書籍1の計2作品が受賞となりました。
まず、『上場会社組織再編または企業買収にかかる会社法株式価格決定裁判における「公正な価格」および「公正な取得価格」の統一的算定方法』(青山学院大学大学院法学研究科 博士学位申請論文)をまとめた石塚明人様がステージに登壇、表彰状の贈呈を行いました。

奨励賞続いて、『日本買い 外資系M&Aの真実(Inbound M&A)』(日本経済新聞社 刊)の著者、加藤勇治様(イースト・インベストメント・キャピタル株式会社 代表取締役)に対して、落合会長が表彰状を朗読、贈呈がされました。

表彰の最後は、社会人を含めた学生の応募論文を対象とする選考委員会特別賞です。

特別賞受賞論文『日本国内のネットサービス分野におけるM&Aを通じた株主価値創造〜イベント・スタディによる検証〜』(早稲田大学ビジネススクール 商学研究科プロジェクト研究論文)をまとめた和家智也様(株式会社ゼスタス 代表取締役社長)が登壇し、落合会長から表彰状を受取られました。

各賞の表彰に続いて、式典は、岩田一政選考委員長(日本経済研究センター理事長)の講評へと移ります。

「本賞の審査は、M&Aに関わる多様なテーマを取り扱った秀作が並び、また、異なる分野の優れた業績を評価、比較することもあり、容易ではありません。本年も、特に最終選考となった2次審査には、いずれも示唆に富んだ力作が揃い、協議の結果、法律の実務と実態を踏まえた上で法学研究の面でも新たな知見を開いた点を評価して、審査委員の満場一致で、正賞は『日本の公開買付け―制度と実証』とする決定に至りました」
と明かされました。

岩田委員長講評続けて、受賞の各4作品に対して、具体的で且つ懇切丁寧な講評がありました。正賞『日本の公開買付け―制度と実証』については、まず、
「日本における公開買付け制度の望ましいあり方を公開買付け価格均一性ルール、情報開示のあり方に関連する行為規制、MBOと親会社による子会社の非公開化、実質的特別関係者などの論点について解釈論のみならず立法論も含めて検討しています。さらに、法学のみならず基本統計の整理を含む実証分析と実務の3つの視点から、その実態を明らかにする論究がなされています」
と評され、さらに、
「現在、証券取引法改正後、10年目を迎え、制度の評価、見直しが求められていますが、本書は、改正後10年の実績評価を具現した書でした」
とまとめられました。

また、奨励賞の2作品については、
「いずれの作品も甲乙つけがたい力作でありました」
と明かされ、まず論文『上場会社組織再編成または企業買収にかかる会社法株式価格決定裁判における「公正な価格」および「公正な取得価格」の統一的算定方法』については、
「株式買取請求・価格決定における「公正な価格」と全部株式取得条項付種類株式の全部取得における現金を対価とした「公正な取得価格」の間の法形式の違い、および、株式対価と現金対価の違いがあることに対して、統一的な算定方法を提案する論文でした」
と説明されました。そして、
「判例を用いた事例研究と比較しながら、統一的算定価格のもつ意義を説く、論理的な一貫性を高く評価したい。第9回選考委員会特別賞の受賞論文をさらに深掘りした力作でありました」
と続けられました。

同じく奨励賞の書籍『日本買い 外資系M&Aの真実(Inbound M&A)』に対しては、
「これまで日本に対する直接投資はM&Aを含めて低い水準にあった中、アベノミクスの成長戦略で対日直接投資の倍増が掲げられていることもあり、時機を得た書」
と評価し、さらに、
「著者は、対日投資の最大の障害は、「生え抜き主義のコーポレート・ガバナンス」と「硬直的な雇用制度」にあると鋭く看破しています」
とした上で、
「文章は分かりやすく、外資系企業で働く場合のアドバイスもついており、外資系ファンドなどによる日本買いの実態を知る上で有益でした」
ともコメントされました。

さらに、選考委員会特別賞『日本国内のネットサービス分野におけるM&Aを通じた株主価値創造〜イベント・スタディによる検証〜』については、
「完全買収よりも部分買収や事業譲渡の方が超過収益率はより大きなものになる傾向があること、また、経営者の持株比率とも関連があることを検出しています。個人投資家比率の高いジャスダックやマザーズで行われた企業買収の方が、東証一部市場で行われた企業買収よりも超過収益率が大きくなる傾向が観察されています」
と整理され、実証分析の手堅さを評価されました。

そのほか、表彰作品からは漏れた優れた作品として、『損をしない会社売却の教科書』(江野澤哲也著)、『米国の新たなインバージョン規制と企業結合型インバージョンの最新動向』(太田洋著)、『M&AにおけるPPA(取得原価配分)の実務 識別可能資産・負債の評価と会計処理』(EY Japan編)の3作品についても優れた作品であったことが紹介されました。

最後は、受賞された皆様への祝辞と、作品をお寄せ頂いた方々への御礼で、選考委員長の講評は終わりました。

続いて、表彰式は、受賞者の方一人ひとりの挨拶へと変わります。
正賞の田中様から、順にステージに上り、それぞれに受賞の喜びとともに、作品に対する思いや執筆の際のエピーソード、ご苦労話、関係者への感謝、今後の抱負などを作品に纏わるさまざまな話がコメントされました。

正賞の田中様は、
田中氏「このたびは、M&Aフォーラム賞正賞(RECOF賞)を頂きまして、大変ありがたく光栄に存じております。また、審査の労をお取りいただいた岩田一政先生始め、審査委員の先生方に、執筆者を代表してお礼申し上げます」
と述べられ、
「この本は、“公開買付研究会”という法学者、経済学者、そして森・濱田松本法律事務所の弁護士の先生方と共同研究です。もともとは、森・濱田松本法律事務所の石綿先生から、「事務所で公開買付けに関するデータベースを整備しているので、これを使って実証研究を含めた研究ができないか」というお誘いを受けて、それが契機となって始めた共同研究の成果物です」
として、まず、受賞作品を執筆するきっかけを話されました。また、取り上げられている実証研究の内容をいくつか具体的にご紹介され、
「共著者の先生のお力を借りることで、自分の年来思っていた疑問のいくつかを解消することができたと考えております。今回、本当に、本書の出版の契機となった研究会を開催できて良かったと思っております」
として、共同研究の方々への謝辞を述べられました。そして、
「実務は日進月歩であり、本書がまとまった頃よりも判例の展開も急であり、それに伴った実務の進展がございます。そういたこともフォローしながら、望ましい公開買付け法制、企業買収法制についての研究を引き続き進めていきたいと考えております。このたびはありがとうございました」
とまとめられました。

次いで、奨励賞2作品の受賞者のスピーチとなり、まず、石塚様がステージに上がります。

「このたびは、M&Aフォーラム賞奨励賞を頂戴しまして大変光栄に存じます。
審査をしてくださった先生方、このような賞を主催くださった関係者の皆様に厚く御礼申し上げます」
とされ、続けて、
「指導教員の土橋正教授には、内容を始め、誤字脱字等細かいチェックまで土日を返上して指導していただき、作成することができました。審査の過程では、諸先生方から幾多の指摘をいただき、それを論文に反映することができました。この場を借りて、諸先生方へお礼申し上げます」
と謝辞を述べられました。
また、論文の内容にも触れながら、
「私自身、価格決定裁判における価格決定はこうあるべきだという持論をまとめることができたのではないかと思っています。学説にはいろいろな異論がありますが、ひとつのたたき台、論文自体がひとつの資料としてまとまっていますので、何らかの形で活用していただければと考えております」
と続けられました。

続いて、加藤様は、
「このたびは、このような賞をいただきまして、大変光栄に感じております。ありがとうございました」
と述べられ、さらに、
加藤氏「この本は、私が外資のファンドにいたときの経験に基づいておりまして、このような仕事は非常に世の中的にはなかなか理解していただけないものなので、本を書いてみようと思いました」
とし、続けて、
「日本においては、アウトバウンドM&Aに比してインバウンドM&Aは6分の1程度しかなく、安倍首相が対内直接投資を高らかにやるといっても盛り上がらない。私ごときがとは思いましたが、少し大げさですが、受けはよくないと思いましたが、こういう本を書いてみました」
として、執筆の経緯を紹介されました。また、読者からの感想なども紹介されながら、
「今回このような非常に歴史のある賞をいただきまして、インバウンドはなかなか理解されない、バイサイドはなかなか理解されない、ファンド悪者的なところから、先生方、実務家の集まりで賞を決めていただいたというのは、なかなか褒められない仕事ではありますが、今までやってきた仕事を褒められたような気がしまして、大変に嬉しく思っております」
と喜びを語られました。

最後に、選考委員会特別賞の和家様がステージに上ります。
「このたびは、選考委員会特別賞という大変光栄な賞をいただきまして、光栄に存じております。選考委員の先生方、関係者の皆様方、大変ありがとうございます」
と挨拶は始まり、 和家氏
「本論文につきましては、日本国内に限りますけれども、ヤフー、楽天、DeNA等企業がM&Aを行うにあたり、どのような株価効果を出しているか、企業価値を創造しているか、または毀損しているかを、イベントスタディという実証研究で行ったものです」
と論文の内容をご紹介しつつ、残された課題について今後も研究を続ける意向を話されました。その上で、
「私のようなM&Aの仲介アドバイザーとして、実務を携わっているものが、業界の発展に少しでも寄与できるよう、今後尽力できればと考えております」
としてまとめられました。
全体スピーチが終わると、受賞者の皆様と落合会長、岩田選考委員長が加わっての記念撮影が行われ、式典は終了しました。M&Aフォーラム賞の歴史にまた新たなページが加わりました。

表彰式の終了後は、懇親パーティーへと会場は変わります。

懇親パーティーの始めは、M&Aフォーラム事務局の(一社)日本リサーチ総合研究所理事長 藤岡文七が、 藤岡理事長
「第11回M&Aフォーラム賞の受賞者の皆様方おめでとうございます」
というご祝辞とともに、フォーラム設立からの10年余りを振返りながら挨拶があり、
「本日、ご列席の皆様方の益々のご健勝、ご活躍を祈念して乾杯」
の発声で、皆様が乾杯されて、懇親パーティは始まりました。
懇親会懇親パーティーでは、落合会長、岩田選考委員長はじめ、今回の受賞の皆様に、ご多忙の中でご参加いただけた第11回までの歴代の各賞受賞者も加わり、参加者の懇親と親睦を大いに深める機会となりました。
途中、「M&Aフォーラム賞」のスポンサーである株式会社レコフ様から、選考委員のお一人でもある株式会社レコフデータ専務理事の丹羽昇一様と執行役員の吉富優子様よりご挨拶があり、続いて、本フォーラムを支援いただいているマーサージャパン株式会社から、『クロスボーダーM&Aの組織・人事戦略』(中央経済社 刊)という著作で、第9回M&Aフォーラム賞奨励賞を受賞され、10月スタートの「第27回M&A実践実務講座」でも講師をお願いしているパートナーの竹田年朗様からもご祝辞がありました。
そのほか、当日、業務等の都合によりご参加いただけなかった歴代受賞の皆様方からも受賞者への祝辞や昨今の活動など近況やM&Aとの関わりについて、メッセージが寄せられ、事務局から披露されました。
懇親会は、M&Aフォーラム発足の基礎となった旧M&A研究会(内閣府経済社会総合研究所)のメンバーの皆様やM&Aフォーラム関係者も加わり、終始和やかな雰囲気での盛会となりました。

田村氏宴の最後は、『MBAのためのM&A』(有斐閣 刊)で、第3回M&Aフォーラム賞奨励賞の受賞された一橋大学商学研究科教授の田村俊夫様のご挨拶をいただき、
「ファカルティは授業のノルマがあり、バリュエーションとファンダメンタル分析の講義を立ち上げているが、レジュメ作りで、全く研究の時間が取れない本末転倒な状態」
とご自身の研究テーマのご紹介も交えた近況のご報告があり、
「今回受賞の4作品も非常にすばらしく、年に1回の同窓会のようでこの会で拝見できて、とても嬉しかった」と賞賛され、さらに、
「来年以降も、ますますこの会が発展して、日本、アジア、世界のM&Aの発展に貢献に寄与することを祈念して、拙い挨拶に代えたい」
とまとめられ、閉会となりました。

M&Aフォーラムでは、今後もさまざまな活動を通して、有意義な交流を図る機会を設けるよう、心がけていきたいと考えております。