M&Aフォーラム賞

バイアウト 産業と金融の複合実務

M&Aフォーラム賞奨励賞 『RECOF奨励賞』

書籍 日本経済新聞出版社
作 者:佐山 展生、山本 礼二郎 共著

作品の要約

表紙写真 「バイアウト」は、近い将来、「良い会社」を創るための社会インフラの重要な一部分をしめるようになるだろう。バイウアトとは、一定の基盤のある企業に投資し、企業価値向上のための適切な経営関与をし、後に投資利益を実現することを言う。また、良い会社とは、株主だけ、経営者だけでつくれるものではなく、従業員も一体となった会社関係者全員でつくりあげるものである。バイアウトの効用は、金融理論と産業の叡智を企業活動の現場で複合しながら融合し一体となってそれらを運営することである。それが、本書の副題を「産業と金融の複合実務」とした理由である。正しい理念の下に運営される日本型バイアウトは、企業の役職員などと共にその企業に変革をもたらし、さらに日本経済をも活性化する存在となるはずである。
 第1章「バイアウト市場」では、バイアウトの性質と社会的価値、そして市場の発展を統計資料を交えて体系的に解説している。第2章「バイアウト・ファンドのデザイン/設計」及び 第3章「ファンド・レイズ」では、ファンドの設立、投資方針のデザイン、決裁やガバナンスの仕組み、投資契約、そして、実際にファンドを募集するプロセスについて解説している。
 第4章「案件発掘・ソーシング」では、投資案件発掘のプロセス、調査分析、企業価値評価、提案等のソーシング活動について解説している。第5章「投資取引」では、資本構成ストラクチャーの立案、基本合意書の締結、デューデリジェンス、交渉、経営陣との意気投合のプロアセス、契約の実行等のプロセスについて解説している。第6章「ファイナンス」では、M&Aにおけるレバレッジの意味、エクイティ・メザニンといった金融手法、契約、そしてストラクチャリングの事例集を用いて詳しく解説している。
 第7章「バリューアップ行程:インテグレーション」では、投資時から始まるインテグレーション・プロセス、ガバナンスの設計、経営陣とファンドの関係、組織設計のポイント、経営戦略の立案、実行管理表の作成、インテグレーションを阻害する要因、経営計画・組織論が机上のものでないよう魂を入れることの大切さを解説している。第8章「バリューアップ行程:オペレーション・モニタリング」では、モニタリングの基本姿勢、KPIの設定、リスクコントロール、事業売却・買収による企業価値の向上、ロールアップといわれる手法について解説している。
 第9章「エグジット」では、投資利回り、バイアウト・ファンドの立場、売却のタイミングの選び方、買い手企業の設定、各エグジット手法の特徴、良いエグジットについて解説している。
 最終章である第10章「バイアウトの未来に向けて」では、バイアウトの社会的意義、バイアウト・ファンドがやるべきこと、価値創造のための信頼関係、健全なバイアウト市場の成立要件、良いバイアウト・ファンドとは、良い会社とは、等の命題について未来に向けての思いを述べている。
 全10章の各章末にはコラムをつけ、森・濱田松本法律事務所の石綿学弁護士が「法的側面から見たバイアウト」、ワールドCFOの小泉敬三氏が「非上場化−経営の可能性を広げた一つの出会い」、KPMG FAS代表取締役パートナー知野雅彦氏が「状況に応じた変化のためのステップ」、キリウ代表取締役会長の中川敏男氏が「経営者とファンドとの信頼関係が成功への道」、など第一線の方々にご寄稿いただいている。

評価コメント

 M&A、バイアウトについての日本の代表的な実務家である二人の著者が書いた、バイアウトに関する研究書的な側面ももつ実務書である。
 バイアウト市場の解説から出発して、ファンドのデザインからエクジットまで、バイアウトのステップに沿って具体的かつ丁寧に分かりやすく解説している。また最後にバイアウトの将来についてもまとめており、バイアウトについての網羅的な解説書となっている。
文章も分かりやすく、専門用語も丁寧に解説されており、各章に掲載されているインタビューコラムにはバイアウトに関連するいろいろな専門家のコメントが掲載されているが、これも本書の価値を高めている。
 一定規模まで成長してきた日本のバイアウトの市場が金融危機でかなり影響を受け、存在意義や真価が問われるこの時点に、改めてバイアウトをテーマとして取り上げることは社会的にも意義が大きい。
 テーマ、内容から考えて、この分野の日本におけるバイブルの1つとなりうるすばらしい良書である。著者はバイアウトを理解してもらい、日本を活性化するために活用してもらうことを本書の目的としているが、まさにその目的に適合している本である。理論的な側面もしっかりおさえた実務的な書籍として非常に完成度が高いといえる。