M&Aフォーラム賞

暖簾の会計

M&Aフォーラム正賞『RECOF賞』

書籍 中央経済社
作 者:山内 暁

作品の要約

表紙写真 本書は、暖簾会計を対象として概念的・制度的な研究を行うことにより、暖簾会計をめぐる諸論点を網羅的に考察し、体系的・整合的な暖簾会計論を構築している。本書は、暖簾会計をめぐる制度上の諸課題に対して、暖簾がシナジーであるという一貫した観点から分析したものであり、第T部「暖簾の概念的研究」と第U部「暖簾の制度的研究」の2部から構成されている。本書の特徴及び学界への貢献は、次のとおりである。
 第T部の概念的研究では、暖簾がシナジーであるというシナジー的暖簾観を導出している。膨大な内外の歴史的文献を渉猟することによって、大きくは、無形財的暖簾観、超過利潤的暖簾観、残余的暖簾観へと発展する暖簾概念の歴史的な発展の経緯を丹念に記述するとともに、現代的なシナジー的暖簾観へつながっていく状況を示している。そして、現代の暖簾概念がシナジー的暖簾観を中心に位置づけられるものの、従来の3つの暖簾観からむしろ整合的に解釈しうることを示している。
 第U部の制度的研究では、暖簾をめぐる制度的な課題を網羅的に取り上げ、一貫して暖簾がシナジーであるという観点から丹念な分析を加えている。問題の洗い出しに当たっては、内外の会計基準等を網羅的に参照している。ここで取り上げた問題は、買入暖簾、全部暖簾、段階取得時の暖簾、内生暖簾、負の暖簾、償却・非償却、減損の問題まで、極めて具体的かつ網羅的であり、これにより暖簾会計の全貌を体系的に明らかにしている。そして、暖簾をシナジーとしてとらえることにより、暖簾の会計処理を、その源泉を構成する資産の会計処理に遡って検討できるようにしており、暖簾の会計処理に対する新たなアプローチを提示している。これにより、シナジー的暖簾観の応用力を確認し、体系的・整合的な暖簾会計論を構築している。

評価コメント

 いろいろな会計問題が凝縮されている暖簾について、概念的研究と制度的研究の2つの側面から取り組まれた労作である。
 第T部では、無形財産的暖簾観、超過利潤的暖簾観、残余的暖簾観といった3つの暖簾観の定義やそれぞれの議論の変遷について、先行研究を海外及び国内を含め網羅的かつ丁寧にあたり、しっかりとした考察を加えまとめた上で、暖簾概念の現代的考察として、シナジー的暖簾観を3つの暖簾観と比較しまとめている。
 第U部の制度的研究は、第T部において提示したシナジー的暖簾観に基づいて展開されている。暖簾の資産性、買入暖簾以外の暖簾の認識、負の暖簾、償却と非償却など、今日的で興味深いテーマについて丁寧に考察を加えている。
 全体としての構成もよくまとまっており、テーマは暖簾に絞り込んでいるが、歴史、テーマともに網羅的であり、研究書としての価値は大きい。また、図や、数値例、仕訳例を取り入れ具体的にわかりやすく解説するとともに、文章も非常に分かりやすく書かれている。
M&Aに関連する会計のテーマの大きな中心の1つである暖簾を真正面から取り上げた本書は、日本のM&Aへの貢献という意味でも価値が高いということができる。