M&Aフォーラム賞

税務・法務を統合したM&A戦略

M&Aフォーラム賞奨励賞 『RECOF奨励賞』

書籍 中央経済社
作 者:大石 篤史、小島 義博、小山 浩

作品の要約

表紙写真 本書は、タックス・プランニングを中心に、M&Aのストラクチャリングの手法について近時の裁判例の動向も踏まえて解説し、M&A実務の発展のために筆者なりの見解を提示するものである。
 M&Aのストラクチャリングについては、主に、税務面と法務面の検討によって決定されることが多いにもかかわらず、これまでは、両者を個別に検討するというアプローチが一般的であったように思われる。本書では、従前のアプローチとは異なり、税法も法律のひとつに過ぎないという観点から、可能な限り、税務と法務を有機的に一体のものとして捉えたうえで、整理を試みている。
 本書の構成としては、まず、基礎編で、ストラクチャリングの視点となる、(1)コスト、(2)時間、(3)リスクの考え方を、税務・法務の観点から説明したうえで、M&Aに用いられる各基本的取引類型(株式譲渡(相対売買・TOB)、事業譲渡、新株発行・自己株式処分、自己株式の取得)及び組織再編を用いたM&Aの基礎的知識及びエッセンスを整理している。そして、基礎編の最後で、実務上問題となりやすいM&Aと租税回避について、アメリカにおける租税回避否認の議論を踏まえたうえで、筆者なりの見解を提示している。
 応用論では、ゴーイング・プライベート/MBO,エクスチェンジオファー、三角合併、クロスボーダーのM&A、デット・エクイティ・スワップ(DES)、非時価取引、グループ内再編(連結納税等)など、M&Aのタックス・プランニングに関連する主なトピックを取り上げ、基礎編とリンクさせつつ、税務上・法務上のポイントを近時の裁判例や各種研究会の報告書も踏まえて説明している。この応用編では、M&A実務に携わっている筆者がまさに現場で直面する税務上・法務上の問題を取り上げ、より良いM&A実務の議論の土台となるべく、現時点における筆者の見解を提示している。
 また、本文とは別に、新株予約権とTOB、表明・保証違反に基づく損害の補償に伴う税務上の処理、スピンオフなど、実際にM&Aの組成を行う際に遭遇する様々な実務上の問題点についても、「実務上のポイント」というかたちで説明を加えている。
 以上のとおり、本書は、M&Aを専門とする弁護士として、実際のM&Aにおいて日々直面している税務・法務所の問題を解説することに加え、筆者なりの見解を提示することによって、M&A実務の発展を期したものである。

評価コメント

 筆者は3名とも森・濱田松本法律事務所の30代の弁護士である。M&A取引につき、基本的な類型と応用的類型とに分け、そこから生じる租税上の問題点および会社法・金商法上の留意点を踏まえて、適切なディールのストラクチャーを選択することができるようにというタックス・プランニングについて分かりやすく解説するものである。おそらく、企業の財務部・法務部などのメンバーを主たる読者と想定しているが、弁護士・税理士などの教育(自習)においても十分活用されるであろう。
 法務と税務がバラバラに解説されるのではなく、両者を合わせて複数のストラクチャーの対比・選択という作業を示している点が特徴である。これまでに、類書は決して多くなかったものと思われる。
 分厚い本ではないが、情報量は多く、それが把握しやすい全体構造の中に位置づけられ、また索引もあることから、読者にとっては親切なつくりとなっている。文章にも抵抗感は少なく、図のレイアウトも目に優しく、安心して読み進むことができる。独創性があり、実務への応用可能性は大きい。