M&Aフォーラム賞

第7回M&Aフォーラム賞表彰式 

 第7回M&Aフォーラム賞授賞作品の表彰式が、10月7日(月)18:30より、東京都千代田区霞が関の霞山会館「三彩の間」(霞ヶ関コモンゲート西館37階)で行われました。
 7回目となった今回のM&Aフォーラム賞は、日本経済が東日本大震災からの復興を進める中、国内のM&Aマーケット(In−In)はようやく復調の兆しが見え始め、また、円高等を背景に海外進出・クロスボーダー型M&A(In−Out)が、成約件数、金額とも大きく拡大した中でのM&Aフォーラム賞の募集となりました。
 応募頂きました作品数は、昨年より1作品多い12作品で、特徴としては、法律、経営、会計、税務、組織・人事マネジメントなどをテーマに、学術研究書やM&A実務書としてとりまとめた作品の応募が見られました。今回、応募いただきましたそれぞれの作品のレベルは、今までの応募作品に勝るとも劣らない、非常に優れたものでありました。

 はじめに、落合誠一M&Aフォーラム会長(中央大学法科大学院教授 東京大学名誉教授)からご挨拶がありました。 落合会長

 M&Aフォーラム賞の選定は、今年で7回目となります。毎年優れた作品のご応募をいただいておりますが、日本のM&Aに対して非常にプラスの影響を与えており、かつ、M&Aフォーラムとしても有意義な制度になっていることと自負しております。合わせて、表彰制度を継続する上で、スポンサーのレコフ様にも感謝を申し上げる次第です。
 本日の表彰式は、栄えある受賞者の皆様を表彰するとともに、表彰式の後には、今回の受賞者の皆様や、M&Aフォーラム関係者の皆様と、M&Aに関して腹蔵なく議論できる素晴らしい時間も用意されております。受賞された作品は、今回も力作揃いということで、今日のこの機会を予ねてから私も大変楽しみにしておりましたし、また、ぜひ大いに議論したいと考えております。

 作品の選考については、後ほど、選考委員長をお願いしました岩田先生から経緯やご苦労話についてのご説明があると思います。
 M&Aフォーラムも設立から7年余りが経過しましたが、今や、日本企業の経営戦略において、まずますM&Aの重要性は増しているところといえます。
 日本経済の復調とともに、M&Aを取り巻く環境も徐々に好転する気配もうかがわれ、最近も、世界的なITメーカーによる国際的な三角合併の手法を使っての合併が発表されたところです。

 今回のM&Aフォーラム賞において、多くの優秀な応募作品の中から見事に正賞、奨励賞に選ばれた受賞者の皆様には心からお祝いを申し上げます。また、お忙しいところ、本日の授賞式にお集まりいただいた皆様にお礼を申し上げ、挨拶といたします。

 続いて、第7回M&Aフォーラム賞各賞の表彰と副賞の贈呈が行われました。
はじめに、『友好的買収の場面における取締役に対する規律』で正賞(RECOF賞)を受賞された東北大学 大学院法学研究科 准教授である白井 正和(しらい まさかず)様に落合会長より表彰状の朗読、贈呈が行われました。

 表彰は、M&Aフォーラム賞奨励賞(RECOF奨励賞)へと移ります。
M&Aフォーラム賞奨励賞は、本来は1作品の表彰となるところですが、今回はいずれも秀作ということで、甲乙付けがたく3作品が受賞となったことが報告されました。

 奨励賞の表彰は、まず1作品目として、『クロスボーダーM&Aの組織・人事マネジメント』をまとめられたマーサージャパン株式会社 グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル、竹田 年朗(たけだ としろう)様に、落合会長が表彰状を朗読、贈呈されました。
 続く2作品目は、『日本における企業再編の価値向上効果−完全子会社化・事業譲渡・資本参加の実証分析−』をまとめられた中京大学 経営学部経営学科 准教授である矢部 謙介(やべ けんすけ)様が登壇し、表彰状の贈呈を受けました。
 さらに、3作品目は、『M&A・企業組織再編のスキームと税務〜M&Aを巡る戦略的税務プランニングの最先端』を共著でまとめられた西村あさひ法律事務所 メンバーパートナー弁護士、ニューヨーク州弁護士の太田 洋(おおた よう)様、同事務所のパートナー弁護士の野田 昌毅(のだ まさき)様、同じく、アソシエイト弁護士の石川 智也(いしかわ のりや)様が順に登壇し、落合会長から表彰状がそれぞれ贈呈されました。

 また、これまでは、奨励賞に次いで、学生の方の応募論文を対象とする選考委員会特別賞の表彰が行われていました。しかしながら、今回は、応募論文に対する評価、検討を行い、選考委員会で受賞について議論した結果、残念ながら、該当作品なしと決定したことが報告されました。

 表彰式は、選考委員会委員長の労を賜りました岩田一政日本経済研究センター理事長からの、選考を終えての講評と受賞者へのお祝いの言葉へと続きます。

 第7回目のM&Aフォーラム賞には、12作品の応募がありました。今年は、法律、税務、会計、経済の分野に加え、組織・人事マネジメントやM&Aの実践的な技術など実務の分野について著作とした作品が応募されました。
 2次審査に残った作品はいずれも秀作でした。とりわけ、受賞された4作品は、ランク付けすることが極めて困難でありました。 岩田氏

 なかでも、白井正和著『友好的買収の場面における取締役に対する規律』は、友好的な買収ケースにおける経営者と株主の利益相反の問題を取り上げて、その観点から、取締役に対する規律のあり方を論じた本格的な学術書です。
 アメリカでは、この問題については、日本に比べて深い経験と議論の積み重ねがされています。特に、デラウェア会社法という私的な秩序形成を広く許容する「授権アプローチ」を採用しています。本著作では、このデラウェア法の下における、裁判所による取締役の信認義務に関する判断を通じた柔軟な救済手段の提供を丁寧にレヴューしています。「経営判断原則」か、または、「完全な公正の基準」という二分法から始まり、中間的な「レブロン基準」や「ユノカル基準」の下での友好的買収の変遷と経営者と株主の間の潜在的な利益相反問題に対処するための全体像を概観しています。アメリカの過去の経緯を概観するだけでなく、さらに踏み込んで、日本における規律のあり方、とりわけ、株主の最終的な判断基準の行使と裁判所が果たすべき役割を論じた最初の本であり、完成度の高い作品となっています。
 上場会社による発行株式数に制限のあるアメリカと異なり、日本では第三者割当増資による友好的買収がアメリカと比べるとむしろ容易ですが、株主による最終判断権限が失われるという問題があります。組織再編にあたり、株主総会の特別決議を要求すること、裁判所による介入、例えば、差し止め、友好的買収の無効、損害賠償責任の追及などを通じた規律付けの強化が必要と論じています。より具体的には、善管注意義務・忠実義務違反の有無を判断する審査基準の明確化を求めています。

 次に、竹田年朗著『クロスボーダーM&Aの組織・人事マネジメント』は、M&A実務の分野における力作でした。しかも、読みやすく、M&A後の経営統合、ポスト・マージャー・インテグレーション、PMIと呼んでいるようですが、このPMIプロセスにおける実務上の問題を極めてきめ細かく、かつ体系的に叙述をしています。これまでの日本企業のM&A実務上の関心は、主として企業買収に当たってどのようなことを注意すべきかということに焦点がありましたが、本著作は、買収後の企業経営、組織のインテグレーションはどうか、どのようにマネジメントしていったらよいかという、日本企業が現在直面している問題を取り上げています。組織・人事マネジメントに苦闘している企業の経営者のよき指針となる書といえます。

 矢部謙介著『日本における企業再編の価値向上効果―完全子会社化・事業譲渡・資本参加の実証分析』は、企業再編の価値向上を株主価値の向上と財務業績の向上の2つに分けた上で、株式の累積超過収益率と超過ROA(総資産営業利益率)の決定要因を中心に、完全子会社化、事業譲渡、資本参加の3つのケースについて、同一の計量的な手法を用いて丹念な実証分析を行っています。そして、完全子会社化のケースでは、株主価値向上について、買収プレミアムには、経営統合効果に関する内部情報が含まれているとする「内部情報反映仮説」が該当することを導いています。また、財務業績向上については、買収会社の影響力が大きい場合には買収プレミアムが低く設定され、経営改善が進みやすいとする「交渉力反映仮説」を支持する結果を得ています。

 太田洋編著『M&A・企業再編のスキームと税務―M&Aを巡る戦略的税務プランニングの最先端』は、文字通り税務プランニングの最先端の問題を展望し、かつ日本における税務ルールの外国と比べた特徴と残された課題や不十分な点をシャープに叙述した著作です。日本ではまだ実例が少ないようですけれども、今後大きな課題になると予想される問題に正面から取り組んでいます。とりわけ、第8章の「スピンオフ、スプリット及びスプリットアップと課税」や第9章の「海外への本社移転、コーポレートインバージョンと課税」は、アメリカの税務の実情を中心に文字通り最先端の問題を扱った書であるといえます。
 また同時に、日本の法人税法については、「現物配当による資産の増加益への課税」問題に関する通達の扱いを巡る問題や法人税法132条2(企業再編にともなう租税回避行為の一般的な防止規定)の適用要件の条文に関する解釈などについてかなり踏み込んだ専門的な叙述がなされています。複数の執筆者によることもあり、全体としての統合性、難易度のばらつきも見られますが、全体として優れた税務に関する先端の書といえます。

 いずれも甲乙付け難い力作でしたが、『友好的買収の場面における取締役に対する規律』が、その完成度の高さが評価のポイントとなり、審査委員の満場一致でM&Aフォーラム賞の正賞とし、また、『クロスボーダーM&Aの組織・人事マネジメント』、『日本における企業再編の価値向上効果―完全子会社化・事業譲渡・資本参加の実証分析』、『M&A・企業再編のスキームと税務―M&Aを巡る戦略的税務プランニングの最先端』の3作品には、奨励賞を授与することに決定を致しました。

 次に、M&Aフォーラム賞の前身であるレコフ賞を受け継ぎ、学生論文を対象として表彰を行ってきましたM&Aフォーラム賞選考委員会特別賞について、応募2作品を対象に受賞の可否を検討しました。しかしながら、今回の応募作品はいずれも事象の整理・分類にとどまっており、授賞するには更に踏み込んだ分析が必要であるとの意見が委員より出され、全会一致で、今回は該当作品なしとすることを決定しました。

 最後に、残念ながら今回の表彰作品から漏れましたが、優れた作品はほかにも数多く応募されました。なかでも四方藤治著『プロフェッショナルのためのM&Aの技術〜M&Aとは「総合格闘技」である』は、200社にものぼるM&Aの実践を踏まえたM&Aの優れた技術指南書でありました。また、会計の分野では、花村信也著『M&Aと会計情報に関する理論的実証的研究』は、敵対的TOB,のれん(全体のれんと部分のれん)を中心にM&Aと会計情報(情報開示、企業評価)に関する理論的、実証的研究を行った良書もございました。
 今回受賞された皆様に心よりお慶び申し上げますとともに、作品をお寄せいただいた方々に改めて御礼申し上げます。

 続いて、表彰式は、受賞者お一人おひとりが順にステージに上り、受賞の挨拶へと移りました。
 皆様それぞれに、受賞の喜びとともに、作品に対する思いや執筆の際のエピーソード、ご苦労話、関係者への感謝、今後の抱負などをコメントされました。

白井氏 はじめに、『友好的買収の場面における取締役に対する規律』で正賞を受賞された東北大学准教授の白井様は、
受賞の著作をまとめる上で前提となった問題意識や調査、分析で工夫された点、苦労された点などを披露されました。さらに、受賞作品では、現状の考えを表現できたとする一方で、積み残したと思われる課題についても触れられ、引き続き、M&A分野の調査、研究を継続していきたいとまとめられました。
次いで、『クロスボーダーM&Aの組織・人事マネジメント』で奨励賞を受賞されたマーサージャパンの竹田様は
takeda受賞の著作をまとめた経緯について触れられた後に、自身のコンサルタントとしてのご経験から、M&Aの成功確率は3割といわれるが、あくまで平均打率で、繰り返しM&Aを実行することで確率は上昇することも多いと紹介されました。業績をあげるためにも、日本企業はリスクをとってもM&Aに取組み、その際には、買収することのみならず、買収後の組織・人事をどうするかという点も非常に大事なポイントであると述べられました。
続いて、『日本における企業再編の価値向上効果−完全子会社化・事業譲渡・資本参加の実証分析−』で奨励賞の受賞となった中京大学の矢部様は、 矢部
受賞作品のテーマを選んだ理由として、ご自身が実務で携わった日本企業のグループ経営化の動きに対する成果を実証してみたいという欲求が元になったことを披露されました。検証結果はポジティブな成果として表れており、さらに、今回の受賞となったことは大変喜ばしいとコメントされました。
 また、『M&A・企業組織再編のスキームと税務〜M&Aを巡る戦略的税務プランニングの最先端』で奨励賞を受賞された西村あさひ法律事務所弁護士の太田様、野田様、石川様が順に挨拶をされました。
太田 『委任状勧誘に関する実務上の諸問題 〜委任状争奪戦(proxy fight)における文脈を中心に〜』という論文で、第2回のM&Aフォーラム賞奨励賞を受賞されている太田様は、今回が2度目の受賞で喜びも一入であると初めにコメントされ、続けて、日本企業がM&Aを進める上でタックスプランニングは不可欠であると強調されました。太田様は、今回の著作の編著者であり、M&Aの税制のあり方を制度の問題としてまとめたが、今後もこの視点を重視しながら日々取組んでいきたいと話されました。
野田氏 続いて、野田様は、「M&Aは総合格闘技」という言葉を引用しながら、日々の業務ではさまざまなM&A案件が持ち込まれ、多くの分野で非常にチャレンジングな案件も多く、アドバイザーとして誰も考えたことのないような新たなストラクチャーを検討することもあるが、そうした中で、税務の関係について整理、まとめたものが、今回の受賞作品へとつながったことを、受賞の喜びとともに披露されました。
 石川様は、法制度は短期間で改正されることも多くあるため、常にアップデートが求められるが、今回の受賞作品をまとめる際にも、見直しのタイミングはいつかといった具合に追いかけられる恐怖心のような気持ちを味わったことをコメントされました。 石川氏

 最後に、受賞者の皆様と落合会長、岩田選考委員長が加わっての記念撮影が行われ、式典は終了しました。

 表彰式の終了後は、M&Aフォーラムの理事である藤岡文七日越経済フォーラム専務理事の「おめでとうございます」のご発声のもと、参加者全員で乾杯を行い、懇親パーティーが行われました。

 落合会長、岩田選考委員長はじめ、今回、受賞された皆様全員、及び式典にご参加いただいた第1回から第6回までのM&Aフォーラム賞受賞者の皆様、さらに選考委員の労を賜りました大杉謙一中央大学法科大学院教授、西山茂早稲田大学教授、丹羽昇一レコフデータ執行役員をはじめ、多くのフォーラム関係者が、受賞者との懇親やお互いの親睦を深める機会となりました。

 M&Aフォーラムでは、今後もさまざまな活動を通して、有意義な交流を図る機会を設けるよう、心がけていきたいと考えております。

写真
【写真前列向かって左から、、落合会長、岩田選考委員長、 】

式次第 

正賞

表彰状写真 

奨励賞

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奨励賞

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