M&Aフォーラム

第18回
M&Aフォーラム賞

18th M&A Forum Award

M&Aフォーラムでは、M&Aフォーラム賞選考委員会(委員長:岩田一政日本経済研究センター理事長)のもと、第18回M&Aフォーラム賞の選考を進めてまいりましたが、2024年9月4日に開催されました選考委員会において、満場一致で、以下の4作品を表彰作品として選定いたしましたのでご報告いたします。受賞作品の著者の皆様、おめでとうございます。
また、今回ご応募いただき、残念ながら選外となりました皆様にも御礼申し上げます。
ありがとうございました。
(以下、敬称略、所属は執筆、または応募時点)

  • 選考結果

  • 授賞式の
    様子

  • 募集要項

M&Aフォーラム賞正賞
『RECOF賞』 1篇

  • 『敵対的買収とアクティビスト』
    書籍
    岩波書店 刊
    『敵対的買収とアクティビスト』

    著者

    太田 洋(おおた よう)

    西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士
    受賞者の声
    太田 洋 氏

    太田 洋 氏

    「この度は大変栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。選考委員の先生方はじめご関係の皆様、版元の岩波書店様に厚く御礼申し上げます。今まで奨励賞は3回受賞させて頂いているのですが、正賞の受賞は初めてで、喜びも一入です。
    本書は、一般のビジネスパーソン向けに敵対的買収(同意なき買収)とアクティビストの実相を分かり易く解説するための書籍として、新書形式で執筆致しました。
    「企業買収における行動指針」などの影響もあり、同意なき買収やアクティビスト対応を巡る議論と実務は今後飛躍的に発展を遂げることが予想されるところです。本書がそのような実務の発展の一助となれば誠に幸いです」

M&Aフォーラム賞奨励賞
『RECOF奨励賞』 2篇

  • 『経済安全保障と対内直接投資-アメリカにおける規制の変遷と日本の動向-』
    書籍
    信山社 刊
    『経済安全保障と対内直接投資
    -アメリカにおける規制の変遷と日本の動向-』

    著者

    渡井 理佳子(わたい りかこ)

    慶應義塾大学大学院法務研究科 教授・行政法
    受賞者の声
    渡井 理佳子 氏

    渡井 理佳子 氏

    「第18回M&Aフォーラム賞奨励賞 『RECOF奨励賞』 を賜りまして、誠に有り難うございました。選考委員会の先生方、そして株式会社レコフデータ様に厚く御礼を申し上げます。
    安全保障の見地からの対内直接投資規制は、研究を始めた30年ほど前の時点では、資本移動の自由の例外にとどまっておりました。しかし、経済安全保障の高まりと共に、今日では規制の本流ともいうべき役割を果たすようになってきております。本書は、アメリカと日本の比較を通じ、対内直接投資規制の今後についての検討を試みたものです。
    この度の受賞を励みとして、これからもM&Aをめぐる法制としての対内直接投資規制をテーマに研究を続けて参ります。どうぞ御指導のほどよろしくお願い申し上げます」

  • 論文
    『戦略的提携ネットワークがモジュラー化産業における競争優位性に与える影響-ロジック半導体企業の探索戦略に関する研究-』

    著者

    澤野 亮太(さわの りょうた)

    東京大学大学院 工学系研究科技術経営戦略学専攻 修士課程2年 /
    デロイトトーマツコンサルティング合同会社M&Aユニット
    受賞者の声
    澤野 亮太 氏

    澤野 亮太 氏

    「本作は、企業間の戦略的提携に焦点を当て、製品特性の違いによって、その望ましい提携の在り方が異なることを示唆した論文です。業界や製品のモジュラー化が進行するとき、幅広い提携関係を有する企業と提携すること、また結合度の高い提携形態をとらないことが企業パフォーマンスにとって好ましいことを、M&A取引データを用いて実証しました。M&Aの実務経験から着想したテーマを、修士課程での学修・研究で発展させ論文にした本作がM&Aフォーラム賞奨励賞を受賞したことは、その過程にて様々な方法で支えて下さった諸先輩方のお陰であり、感謝の念に尽きません。 今回の受賞を終点とせず、更なるM&A研究の発展と、成果あるM&Aの実現の双方に貢献できるよう、弛まぬ努力を続けていきたいと思います」

M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞
『RECOF特別賞』 1篇

  • 論文
    『日本のM&Aにおける会計保守主義の機能』

    著者

    松崎 優一(まつざき ゆういち)

    東京大学経済学部金融学科4年
    受賞者の声
    松崎 優一 氏

    松崎 優一 氏

    「この度は、大変栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。選考委員の皆様、レコフデータ様、そして東京大学首藤ゼミで本論文を執筆するにあたりご指導いただいた首藤先生をはじめ、お世話になった皆様に心より御礼申し上げます。 本論文では、会計処理の保守性が日本のM&Aにおいてどのような影響を及ぼしているかを分析しました。会計学では、主に減損等の損失を早期に計上する会計処理が保守的と定義されます。分析の結果、保守的な会計処理を行う企業は、不採算事業資産を抱えているリスクが低いため、買収の対象となりやすく、高いプレミアムで評価されることが示されました。 本研究を通じて得た知見を実務の中で活かせるよう精進してまいります」

岩田選考委員長による講評

岩田一政選考委員長(公益社団法人日本経済研究センター代表理事・理事長)
岩田 一政 氏

岩田 一政 氏

岩田選考委員長は、「本年の特徴は、事業承継や非友好的な買収に関する作品が多かったように思います。また、優れた学生論文が多数寄せられたことも今年の特徴でありました。応募作品の順位付けを巡って、最後まで慎重に熟議を重ねました」

として、次のように講評を述べた。

「M&Aフォーラム賞正賞『RECOF賞』を受賞した太田洋著『敵対的買収とアクティビスト』は、日本における敵対的買収とアクティビストについての包括的で行き届いた啓蒙書であります。

敵対的買収と非友好的買収の違い、アクティビスト、買収防衛策、敵対的買収に対する各国の規制および敵対的買収とアクティビストの将来にわたるまで、弁護士として実務経験を踏まえてきめ細かく、かつわかりやすく解説されています。

良い敵対的買収とは何か、良い株主アクティビズムは何か、考えを深める上で必読の書であります」

と高く評した。

続いてM&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』として、『経済安全保障と対内直接投資-アメリカにおける規制の変遷と日本の動向-』、『戦略的提携ネットワークがモジュラー化産業における競争優位性に与える影響-ロジック半導体企業の探索戦略に関する研究-』の2つの作品について述べた。

「渡井理佳子著『経済安全保障と対内直接投資-アメリカにおける規制の変遷と日本の動向-』は、米国の経済安全保障に関する法制度、とりわけ対内直接投資を中心に歴史を追ってサーベイした上で、日本の対内直接投資規制と経済安全保障政策に与えた影響を考察した学術書であります。

本書は、日本では行政指導など行政活動の占める役割が大きいことに鑑み、対内直接投資規制に関する透明性の向上と予見可能性について世界をリードすることを期待しています。

安全保障と経済活動の自由のバランスをいかにとるかという問題は、日米のみならず世界共通の課題であります。本書は、この課題を考える上で不可欠の書と言えます」

「澤野亮太著『戦略的提携ネットワークがモジュラー化産業における競争優位性に与える影響-ロジック半導体企業の探索戦略に関する研究-』は、半導体生産のアーキテクチュアの違いに着目しています。

モジュール型が進展するロジック半導体産業においては、新しい技術・知識の所在を特定し、事業モデルの確立・標準化を進め、将来のパートナー選別を可能にする「探索戦略」が適しています。他方で、パワー半導体はアーキテクチュアにインテグラル型(すり合わせ型)を残しており、「深耕戦略」が競争優位を確立しやすい分野であります。

TSMCは、アーキテクチュアのモジュール化に成功した企業であり、日本のラピダスも多くの関連企業とのネットワークを形成できるかどうかが問われています。日本が先端半導体産業の再興に成功するかどうかが注目されている今日、多くの示唆を与えてくれる論文であり高く評価できます」 と評した。

続いて、M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞『RECOF特別賞』として、『日本のM&Aにおける会計保守主義の機能』について述べた。

「松崎優一著『日本のM&Aにおける会計保守主義の機能』については、会計保守主義には、ニュース発生とは無関係に保守的な会計処理を行う「無条件保守主義」とニュース発生後に保守的な会計処理を行う「条件付き保守主義」があります。

本書は、2003年から2022年にかけての買収・合併案件について、「条件付き保守主義」に立つ会計報告には、In-In企業買収を行う買手企業にメリットをもたらす機能があり、会計保守主義の程度が高い企業が選好されること、また、買収・合併に関する2007年証券取引法改正後には、買収プレミアムを通じて買収された企業にもメリットが還元されているとの実証分析を手堅く行っています」

と締めくくった。

人材育成と優れた作品の表彰を通じ、わが国M&Aの発展に貢献

M&Aフォーラム落合誠一会長(東京大学名誉教授)
落合 誠一 氏

落合 誠一 氏

「私ども『M&Aフォーラム』の設立経緯を振り返りますと、内閣府経済社会総合研究所にM&A研究会が置かれ、私もそのメンバーとして参加し、わが国のM&Aの発展について議論がなされました。この結果、2005年にM&Aフォーラムの設立が提唱され民間ベースのフォーラムとして発足した訳ですが、その過程で、M&Aフォーラムの事業の柱となる2つの重要な点が挙げられました。

1つはM&Aに精通した人材の育成であります。基本的な部分と応用的な部分の大きく2つに分けて、それぞれに応じて人材養成プログラムを進める形で生み出されたのが『M&A人材育成塾』です。M&Aを学べる研修・セミナーを開催し、これまでにご活用いただいた企業数は延べ1,400社を超え、受講された方は延べ約2,000名に達しております。当フォーラムは、人材育成を通じてわが国のM&Aの発展に微力ながらも貢献してきたものと自負しております。

もう一つは、M&Aに対する研究を発展させていくことの必要性です。この考えに基づいて開催されておりますのが『M&Aフォーラム賞』です。わが国のM&Aの普及啓発に資する優れた書籍、研究論文に対して表彰する制度であり、毎年実施して参りましたが、月日の経つのは早いもので18回目を迎えました。また、これまでに66作品の書籍・研究論文が顕彰され、M&Aの研究者の方々の間でも相当に浸透している賞ではないかと思っております。

受賞作品の選定においては、甲乙つけがたい優れた応募作品が多い中、岩田一政選考委員長の下、選考委員会において、厳正なる審査が行われております。岩田委員長を始め、審査の労を賜りました選考委員の先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

なお、M&Aフォーラムが設立された当時と比較しますと、日本でも随分M&Aが普及し、企業経営の有力な手段になっております。日本のM&Aがますます発展し、ひいては日本の経済・産業全般にプラスの影響を与えることを望んでおります。」

選考経過ご報告

M&Aフォーラム賞選考委員会は、2023年度(令和5年)「第18回M&Aフォーラム賞」に4作品を選定し、10月18日授賞式が行われた。

「M&Aフォーラム」は、2005年の内閣府経済社会総合研究所の「M&A研究会」において民と官との連携ができる民間ベースのフォーラムが提唱されたことを受け2005年12月に設立され、今年で19年目を迎える。

理論的、実証的及び実務的な視点から、進歩、変化するM&A事情の研究・調査を行い、今後の我が国におけるM&Aのあり方について提言を行うとともに、主に企業人を対象にした「M&A人材育成塾」の運営等の活動を通じて、M&Aの普及・啓発、人材や市場の育成に資することを目的としており、さまざまな関係分野の有識者、実務専門家、企業関係者が参加する場となっている。

「M&Aフォーラム賞」は、2000年度に「M&Aに関する社会科学的観点からの研究論文の執筆で顕著な業績をあげた学生・院生を顕彰する懸賞論文制度」としてレコフが創設した『RECOF賞』が前身で、M&Aフォーラムからの強い要請もあり、学識経験者、行政担当者、M&A専門家、企業関係者(実業界)ならびに大学院、大学、各種専門学校を含めた学生にいたるまで幅広い分野に対象を広げ、06年にM&Aフォーラム賞『RECOF賞』として引き継がれた。

第18回を迎えた今回は、法律、経済、経営、税務・会計、ファイナンスなどをテーマにそれぞれの観点で掘り下げた、21の書籍・論文の応募があった。 選考委員長の岩田一政氏(公益社団法人日本経済研究センター代表理事・理事長)のもと、大杉謙一氏(中央大学法科大学院教授)、西山茂氏(早稲田大学ビジネススクール教授)、岩口敏史氏(レコフデータ会長)の3人の委員によって、

  • 作品が創造性に富んでいること
  • 理論的、実証的な分析を行っていること
  • 実用性・実務への応用可能性が高いこと
  • 問題点を先取りし、その解決の糸口を論じたもの
  • M&Aの啓蒙に資するもので、業界全体への影響力が高いと判断されるもの

などが主な基準で審査が行われた。

M&Aフォーラムの懸賞論文
第18回M&Aフォーラム賞 募集要項

M&Aフォーラムは、わが国のM&Aの普及・啓発、人材や市場の育成を目的とした活動を展開しております。M&Aフォーラムでは、この活動の一環としてM&Aに関する法律・経済・経営・会計・税務・社会・文化等さまざまな観点からの優れた著作、研究論文を表彰する『M&Aフォーラム賞』を設けております。皆様の積極的なご応募をお待ちしております。
選考委員会は、M&Aに関するさまざまな分野の主導的な研究者や実務者の第一人者で構成されます。

応募資格、条件など

  • 資格
    学識経験者、行政担当者、M&A専門家、企業関係者(実業界)、大学院・大学・各種専門学校を含めた学生等、幅広い分野の方々からの応募を受け付けます。
    個人のほか、学校やゼミナールなどの団体、グループでも応募ができます。
  • テーマ
    M&Aに関わる著書、研究論文(M&Aと法律・経済・経営・会計・税務・社会・文化等との関係について論じたもの)で、理論的・実証的・実務的な分析を論じたものとします。
  • 応募資格
    日本語で書かれたもので、原則として2023年4月から2024年3月までに発表された作品(著書、論文)で、経済専門誌、総合雑誌、各種機関誌等に掲載された論文も可とします。
    また、大学院、大学、各種専門学校を含めた学生の方々につきましては、修士論文、博士論文、卒業論文も対象に加えます。
    対象となる著書および論文いずれも、執筆者ご自身の応募による作品に限定いたします。
  • 応募方法
    • 応募フォーム(https://rd.tayori.com/f/maf18th)に必要事項を入力、
      作品要旨(1,000字程度、様式自由、PDF形式)を添付し、送信
    • 応募作品(2部)およびプリントアウトした作品要旨の書類をM&Aフォーラム賞係まで郵送にてご提出

      <送付先>
      〒101-0041
      東京都千代田区神田須田町1-9 神田須田町プレイス2階
      株式会社レコフデータ M&Aフォーラム賞係
      TEL:03-6371-1210

      Mail:maprize@maforum.jp

  • 期 間
    応募期間は2024年4月30日までとし、当日の消印も有効といたします。
  • 発 表
    入選者には2024年9月上旬を目途に本人宛に通知するとともに、M&Aフォーラムのホームページ(https://maforum.jp/)にて発表を行います(入選者のみに通知します)。
    入選者の表彰および賞の贈呈は2024年10月上旬を予定しております。

審査、選考について

  • 応募書類、応募書籍・論文は選考委員会で審査を行います。
  • 選考委員会は、M&Aに関するさまざまな分野の主導的な研究者や実務者の第一人者で構成されます。

<第18回選考委員会(敬称略)>

  • 選考委員長
    岩田 一政(日本経済研究センター 理事長)
  • 選考委員
    大杉 謙一(中央大学法科大学院教授)
    西山 茂 (早稲田大学ビジネススクール教授)
    岩口 敏史(株式会社レコフデータ取締役会長)
  • 応募作品および選考過程に関するお問合せには応じられません。

4.表彰

  • M&Aフォーラム賞正賞『RECOF賞』 1篇 賞状・副賞50万円
  • M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF奨励賞』 1篇 賞状・副賞10万円
  • M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞『RECOF特別賞』(社会人を含む学生対象) 1篇 賞状・副賞10万円

M&Aフォーラム賞についてのお問合せ

運営 株式会社レコフデータ
住所 〒101-0041
東京都千代田区神田須田町1-9 神田須田町プレイス2階
TEL 03-6371-1210
MAIL maprize@maforum.jp